2020年6月11日

NPO法人北海道がんサポーティブケア協会の設立にあたって

一般社団法人 日本がんサポーティブケア学会
前理事長 田村和夫

 NPO法人北海道がんサポーティブケア協会(HASCAP)設立おめでとうございます。日本がんサポーティブケア学会(JASCC)の前理事長(2020年6月退任)としてばかりでなく、個人的にも心からお祝いを申し上げたいと思います。

HASCAPの発起人としてその創設に手腕を振るわれ、これから代表理事として引っ張っていかれる平山泰生先生(東札幌病院)には、2015年、JASCC創設時から、神経障害部会部会長として学会の発展にご尽力いただいております。なかでも平山部会長の発案で、エビデンスの少ない末梢神経障害に対して果敢に取り組んでいただき、「JASCCがん支持医療ガイドシリーズ」第1号として「がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き」 を2017年に発刊していただきました。これまで、末梢神経障害に対して漫然と使用されていた薬剤の位置づけが明確となり、適正な診療につながっているものと思います。これが発端となり、その他の部会からも次々と手引書やガイドラインが出版されるにいたりました(http://jascc.jp/)。

 がん診療は、がんを標的とした治療(がん治療)とがんに伴う合併症ならびにがん治療による副作用をマネージする支持・緩和医療が車の両輪のように機能してはじめて、目的とする成果、安全で効果的な抗腫瘍効果を得て、QOLの良い状態で日常生活を送ることができます。ただ、日本ばかりでなく先進国においても、支持・緩和医療領域の専門家は必ずしも多くなく、がん治療にくらべこの領域に投下される研究費は極めて少なく、したがって基礎研究はもちろん臨床研究も限定的です。また、タイミングよくアップデートされた適正な情報発信も十分なされているとは言えません。HASCAPはその定款にも謳われていますように、医療従事者ばかりでなく患者・家族も対象として、がん医療にかかわる正しい知識を普及啓発し、また交流の場を創出することによりがん医療や福祉の発展に寄与するものと確信しております。

 本協会は札幌を拠点にして地域の事情やニーズに合った活動がなされるものと思います。同じ志を持った医療者は、全国各地におります。HASCAPの活動がモデルとなり全国に波及していく可能性があります。JASCCとしましても全国に散在して活動しています任意団体(研究会や懇話会)と連絡を密にとり、地域ごとに分科会等に結集できれば組織力の強化につながるものと期待します。

 SARS-CoV-2感染の完全な収束は難しい状況下での船出にはなりますが、がん患者さんに待ったはありません。HASCAPのご活躍を心から祈念しております。