しびれ
オキサリプラチン(エルプラット)、パクリタキセル、ビンクリスチン(オンコビン)などの抗腫瘍剤を投与すると、末梢神経障害により手指にしびれや痛みを感じることがあります。
これらの薬剤は非常によく効くものですから、多少のしびれは「止むを得ない症状」として割り切って頂くことになります。
しびれや痛みが強く、ボタンが掛けにくい、文字を書きづらい、歩行時につかえる、などの症状が出てきたら主治医と相談して治療薬を減量したり、他の治療に変更するなどを検討して下さい。この判断は患者さんの意向も重視されます。しびれても病気と闘いたいという意向であれば、治療を継続することもあります。
治療が終わると年単位ですが、症状はゆっくりと軽くなっていきます。
抗腫瘍薬によるしびれや痛みによく効く薬はありません。デュロキセチン(サインバルタ)が少しだけ効果があるとして処方されることがありますが、眠気などの副作用があるので運転する方には投与できません。他にプレガバリン(リリカ)も良く投与されていますが効果は実証されていません。
患者さんにできることの一つは、運動をすることです。ジョギングや筋トレを行うことで神経障害を軽くできるようです。無理なく楽しくできる範囲で運動することをお勧めします。運動は他にもがん患者さんの各種症状(不眠、不安、疼痛、倦怠感など)を改善すると言われています。毎日30分程度は運動するようにしましょう。強い運動が困難であれば散歩するだけでもいいです。
日常生活について
以下に記載する内容はエビデンス(科学的根拠)に基づくものではないのですが、比較的よく行われている指導を掲載しました。
●血液循環を良くする。
血流循環を良くすることで、CIPNの悪化を防ぐ事を期待して行う。
•入浴時などに患部のマッサージを行う。
(ただし、抗腫瘍剤で皮膚が弱くなっている場合があるので強いマッサージは避ける)
•手のひらや足の指の開閉、患部の手足の屈曲運動を行う。
•運動や散歩をする(運動療法の項目参照)。
•厚手の手袋や靴下で手足を暖める。(きついものは血流循環を妨げるので避ける)
●火傷に気をつける。CIPNにより温度感覚が低下し、熱い物に気がつかず火傷をする事がある。
•熱い調理器具をつかむ時には鍋つかみを使用する。
•湯たんぽは低温で短時間とする。
●転倒、怪我に気をつける。
CIPNにより運動神経が障害を受け、また筋力が低下し転倒や怪我が起こり易くなる。
•階段や段差に気をつける。
•滑りやすい敷物に気をつける。
•脱げ易い履物に気をつける。
•つまずき易いものを床に置かない。