NPO法人 北海道がんサポーティブケア協会

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骨格筋量が少ないとFNが起こりやすくなる

Low pretherapy skeletal muscle mass index is associated with an increased risk of febrile neutropenia in patients with esophageal cancer receiving docetaxel + cisplatin + 5-fluorouracil (DCF) therapy.

Supportive Care in Cancer volume 31, Article number: 150 (2023)

治療開始前の骨格筋量が少ないとFNが起こりやすくなるという論文

対象:食道がんでDCF療法療法を行った39症例

方法:2018年から2020年までの後ろ向き観察研究。

サルコペニアクライテリアに基づいてSMI(skeletal muscle index)を評価。患者をhigh SMI群とlow SMI群に分けて検討した。男性なら7 kg/m2未満を、女性は5.7 kg/m2未満をlow SMIと定義した。

結果:FNの発生はlow SMI群で明らかに高かった(63.2% vs 20.0%, P=0.006)

high SMIは20名、low SMIは19名。単変量解析および多変量解析も行ったが、low SMIは独立したFN発生のリスク因子であった(オッズ比 7.178; 95%CI 1.272-40.507; P=0.026)。投与量の減量についてもlow SMI群で多かった。

結論:DCF療法を行う食道がん患者においては骨格筋量が少ないとFNが起こりやすくなる。

1件のフィードバック

  1. 筆者らは考察の中で「なぜ骨格筋量が少ないとFNが起こりやすくなるのか」というメカニズムについては明確な答えはないが骨格筋量が少ないとAlbが低くなり、このAlbの低下はFNのリスク因子として知られているので、骨格筋量の低下によるAlbの低下がFNに関係しているのではないかと述べている。また骨格筋量が少ないと抗がん薬のPKが変化することが知られており、例えば5-FUのクリアランスが体重や体表面積よりもfat-free massと関係しているという報告や除脂肪体重が5-FUのクリアランスと関係しているという報告を紹介した上で、骨格筋量が少ない患者においては5-FUのクリアランスが低下し血中濃度が上昇するためにFNが起こりやすくなるのではないかとしている。

    ただ、この考察ではなぜAlbが低くなったらFNが起こりやすいのか、なぜ骨格筋量が少ないと5−FUのクリアランスが変化するのかということに関しては言及されておらず、その理由に関しては読み解くことが出来ない。

    Yoshidaら(Nutrients. 2021 Jul 14;13(7):2415. doi: 10.3390/nu13072415.)によるとサルコペニア状態にある患者においては腎機能が過大評価されてしまっていると報告されており、シスタチンCで評価した腎機能に比べてクレアチニンクリアランスで評価した場合には20%程度の過大評価となってしまうとしている。このことからは、サルコペニアあるいは骨格筋量が少ない患者においてはeGFRで評価した腎機能を元に抗がん薬を投与した場合には、本来の腎機能よりも過大評価した状態で投与量を決めてしまっているため、患者にとってはoverdoseとなりやすく、そのためにFNが発生しやすくなるという可能性がある。

    この2つの論文を合わせて読むとその機序が少し見えてくる。

    骨格筋量が少ない患者においては、腎機能が過大評価されてしまい、投与量が多めに設定されてしまうことでFNをきたしやすくなる、というのが今回の論文から見えてくるメッセージである。

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